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見えない未来に振り回されても

N/Aが2人で切り拓くNO GOODでNot Badな世界

2020年9月8日。待ちに待ったこの二人のアルバムを手にする日が来た。
錦戸亮と赤西仁によるN/Aの1stアルバム 「NO GOOD」。
二人が昔から仲が良かったことは知っていたし、赤西さんが独立してひとりで音楽活動を行っていることも知っていた。錦戸さんは、グループでも応援させてもらっていたのでライブにも足を運んでいたし、錦戸さんの作る「音楽」が大好きだった。昨年9月に独立するということを知った時は本当に本当に寂しくて仕方がなかったけれど、翌10月から爆走し出した錦戸さんが奏で続ける音楽に相変わらず心奪われる日々を送っている。

N/Aが始まってから赤西さんの音楽も聴くようになった。殊更音楽に詳しいわけではないのでわからないこともあるが、クラブミュージックやR&Bのサウンドがかっこよく、英語の歌詞も新鮮で聴きこむようになった。錦戸さんの作る音楽とも、今まで私が聴いてきた音楽とも全く異なる洋楽サウンドに驚いた。
4月には自身初のベストアルバムをリリースし、更にはYouTubeで過去のライブ映像配信という大判振る舞い。その恩恵を最大限に受けさせていただき、STAYHOME期間中に全て拝見し、アーティスト赤西仁の作る世界観にどっぷりハマった。
そんな大好きな2人のアルバム「NO GOOD」。錦戸さん本人も「聴いてきた音楽が違う」と言っていたが、全く違う音楽性を持つこの2人のアルバム。「一体どんな風になるんだろう」と、ライブなどの楽しみが無くなってしまったここ数か月の生きがいと言っても過言では無いくらい心待ちにしていた。
初回A、B盤には全10曲が、通常盤には10曲に加えてボーナストラックとして「Hey Girl」が収録されている。全てN/Aの2人がプロデュースした楽曲で、どれもオシャレでかっこいい2人らしさ全開の曲ばかり。CDを手にしてから毎日聴きこんでいるが、全曲聞けば聞くほど好きになるし、なにより早くライブという同じ空間で盛り上がりたいと心から思う。
そんなアルバムの中で私が特に好きな曲が「Not Bad」だ。発売日前にYouTubeにアップされたトレーラーでほんの一部を聴いたのだがその時点で「あ、これ好きだ。」と直感で感じていた。
まず何より、題名から良い。「NO GOOD」に収録されている「Not Bad」。
そもそも「NO GOOD」は2人のYouTubeチャンネルの名前決めの時に「これだね!」と錦戸さんが提示したもので、錦戸さんのNOMAD RECORDSと赤西さんのGo Good Recordsをミックスしたものであると考えられる。ちなみに2人曰く、「面白くなくても大丈夫なような伏線にもなれる」とのことだが、そんな二人の心配は全くの杞憂だったな~というのが今の体感だ。
7月末にアルバム収録曲が発表されたが、「NO GOOD」に続く「Not Bad」を見て思わずニヤリとした。「良くもないけど、悪くもない。」という二人からの伏線メッセージ?なんて考えたりもしたが、どんな曲なのか全く想像できなかった。 
NO GOOD TV Vol.15(8月7日公開)で「ああいうのソロでやんないでしょ」と赤西さんに言われた錦戸さんが(なぜか)照れながらも「あんまやんないですね」と言っていたので、今まで聴いてきた楽曲とは違うテイストの楽曲なんだろうなと期待をしていた。
アルバム収録曲は英語詞が多い中で、Not Badは日本語が多い。クレジットを見ると「Written By RYO NISHIKIDO」とあり「なるほど」と納得した。
先述したように、赤西さんの作る楽曲は英語詞が多く、洋楽サウンドが強い。一方で、錦戸さんの楽曲は日本語の歌詞で、巧みな韻の踏み方や音遊びがあったり、歌詞カードを見て新発見があるのも好きな理由の一つ。
この点で「錦戸さんらしい楽曲」だと思った。
例えばこの歌詞

『くだら(ない喧嘩) 取り巻(く環境)
育っ(た場所) 譲れ(ないモノ)
怒る(タイミング) 歩み(寄っては)
酔い潰れた夜』

曲を聴いているだけではこの()の存在に全く気が付かず、歌詞を見てはじめてここに()がついていることを知る。
大阪と東京で生まれ育った2人の男の子が出逢い、それぞれが煌びやかなステージで活躍した10代~20代。きっと譲れないものを巡って喧嘩もしただろうし、その度にお互い歩み寄っては一緒に潰れるくらいお酒を飲んだ夜だって幾度もあるんだろう。まるでそんな若かりし頃の2人を歌っているように受け取れるこの歌詞は、とてもリアリティがあって情景が頭に浮かぶようなところが錦戸さんの詞だなと思う。
そしてサビの部分はこう続く。

『見えない未来に振り回されていこう
そんな明日も悪くはない』

タイトルの「Not Bad」を「悪くない」ではなく「悪くはない」とすることで、どこか許せてしまうようなニュアンスになる。僅かな違いだが、こういった柔らかさや曖昧さを表現できるのが日本語の素敵なところだなと私は思うし、錦戸亮という作詞家の巧いところだなと思う。また、情景が浮かぶ「過去」の部分と「未来/明日」の対比構造になっているようなところも、決して多くはない歌詞のなかにストーリー性が感じられて面白い。
この曲を聴くと、少し前に「この世で最も怖いものは何?」という質問に赤西さんの「お化け」に対して「見えない未来」と答えていた錦戸さんを思い出す。(4月20日公開 NO GOOD TV Vol.3より)
曲が先かNO GOOD TVが先か、時系列はわからないが、「怖い」と思っていた見えない未来を「悪くはない」と言ってくれたことが私は嬉しかった。こういう風にメロディーに乗せて歌うことが出来たのは、今の世界のおかげかもしれないし、そうじゃないかもしれない。隣にいるのが赤西仁だからかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
この曲を書いた理由は一生わからなくて良いけれど、私は今この曲を聴くことができて本当に嬉しい。

N/Aが始動したのが2019年12月。10月に独立をした錦戸さんは、翌11月から始まった自身初の全国ソロツアーの終盤を迎え、そして自主レーベルから初めてのアルバム「NOMAD」の発売を控えた頃だった。
かつては「仁亮コンビ」と呼ばれていた伝説的な二人がついに始動したというこのニュースは双方のファンにとって本当に嬉しく、こんな日が来るなんて想像だにしていなかった。「共同の作品を期待していいのだろうか?益々楽しみが増えた!」と、とにかくこれからの未来が楽しみで仕方がなかった。同時に2020年5月にハワイで行う合同ライブの発表もあり、「初っ端からさすがだな!!」と思った。
しかし、残念ながらハワイでのライブは中止が決定。中止の発表と同時に「何かしらの音源を出します!」と宣言し、アルバムを夏に発売することが唐突に発表されたのが3月下旬。あの日から半年が経ったが、2人が願っていた未来とは全く異なる「新しい世界」になってしまった。
アルバム制作に加えて4月にはYouTubeチャンネル「NO GOOD TV」を開設し、これまで見ることのなかった2人のプライベートなやりとりや、豪華なメンバーによる人狼ゲームなどが不定期にアップされ、その度にネットニュースになった。こちらもまた想像しえなかった未来だ。

『見えない未来に振り回されていこう そんな明日も悪くはない』
『見えない未来はきっと見えないままでも 逃げる事なんて無いから』

見えない未来は確かに怖い。今だって未知のウイルスとの闘いは続くし、一体これがいつまで続くのか、いつ元の世界にもどるのか、そもそも戻る可能性はあるのだろうか…未来に関して考え始めるとキリがない。
でも、見えないからと言って全てが悪いわけではないし、見えないからこそできる事、変われることだってあるんじゃないだろうか。
NO GOOD TV Vol.0で「再生回数2桁行かなかったら全部やめよう」「逃げよっか」と笑っていた2人を思い出してはそんな風に思う。
「良いことばかりじゃないけど、悪くもないよね。だったら、少しでも楽しく笑って生きて行こうぜ。」
そんなことを言われているような気がして、「Not Bad」を聴くと気持ちがスッとする。
これから先、2人と一緒に一体どんな世界を見ることができるのか。考えるだけでワクワクする。

とはいえ、N/Aはユニットではないし、所属のレコード会社も違う。何しろ2人はN/A、すなわち、Not Available(利用不可/入手不可)なのである…!(ここが2人の賢しいなぁと思うところなのだが)もしかしたらこれが最初で最後のアルバムかもしれないし、そうじゃないかもしれない。こちらもまた「見えない未来」。
だからこそ益々今の2人から目が離せないし、また2人でなにかしらの作品を創って私たちをアッと驚かせてほしいと願わずにはいられない。同じステージに立つ2人を何としても見たい!という楽しみもある。

当たり前と思っていた日常が当たり前じゃなくなった2020年。
生活様式も価値観も、何もかもが変わってしまった2020年。
延期になったオリンピック・パラリンピック。中止になった甲子園、インターハイ、各種コンクールや大会。
コンサートやライブ、舞台などのエンターテインメントも失われてしまった。
そんなNO GOODな世界だけれど、この世界じゃなければ「NO GOOD」は生まれなかっただろう。
こんな世界も「まあ、Not Badだね」と許せてしまうのは紛れもなくN/Aが居てくれたから。

2020年に2人がいてくれて本当に良かった。

仁くん、亮ちゃん、最高のアルバムをありがとう。
 
※『』内は「Not Bad」の歌詞
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