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人生の秋に想うのは

BUMP OF CHICKEN  『Gravity』によせて

 BUMP OF CHICKENの新曲が出る。

 少し緊張した。
 最愛のバンドの新曲を迎えるのは、もちろんいつだって冷静な心持ちではないのだが、これまでとは違う感覚。

 私は、メジャーデビュー曲『ダイヤモンド』に出逢って以来、彼等の音楽と共に生きてきた。決して大袈裟な表現ではない。
 複雑な家庭で生まれ育ってしまったことへの恨み。夢や希望を描けない劣等感。先回りして、続く人間関係などないのだと思い込まないと、怖くて人との関係も結べない弱さ。
 そういった、ネガティブな感情を、私はBUMP OF CHICKENの曲に重ねてきたと思う。その痛みや悲しみ、苦しみは、全く同じではないにしても、そういった感情を知り、抱えながら生きている人がいる。私だけではない。ならば私も、「生まれた」という受動的な態度ではなく、弱くても汚くても、この自分のままで生きよう、と、BUMPの曲を通して、思えるようになった。実際、躓く度に、彼等の曲と対話をし、共感してもらうことで、時には導いてもらうことで、また自分の足で歩いて、ここまで生きてこられた。

 そんな年月を経て、飛び込んできた、ギター・ボーカル担当の、藤原基央さん(藤くん)の、結婚報告。
 私は、かなり、動揺をした。
 最愛のアーティストの選択に対しては、もちろん、心から「おめでとう」だ。
 しかし、BUMP OF CHICKENの曲のほとんどを、作詞・作曲しているのは、藤くんだ。曲の書き方は、人それぞれかもしれないが、根本的には、その人が知っている感覚、心象風景のようなものが、曲に落とし込まれるのだと思う。だとしたら、これからリリースされる曲を、私はどう感じるのだろう。自分のネガティブな部分を投影し、共に生きてきた私は。弱くて汚くて、ただただ生きるのに必死で、現実的に結婚も子育てもしていない、一般的な「幸せ」を知らないと思われる私は。
 
 新曲『Gravity』は、深夜0時に配信開始された。その他の情報(ツアー映像発売等)も同時に解禁となったのがよかったのか、結局私は、躊躇するヒマもなく、新曲を聴いた。
  
 全て、杞憂だった。

 静かなギター音から始まるが、誰かの何かの気配、熱も感じるイントロ。

《帰ろうとしない帰り道 いつもどおり
 視界の隅っこ ほとんど外 君が鼻をすすった》

 脳裏に浮かび上がる、高校時代。地方の進学校にいた私達は、卒業すれば、全国にバラバラに散り、簡単には会えなくなることが判っていた。この日々はもうすぐ終わる、けれど、その事実に真っ直ぐ向き合うのも怖い。だから私達は、いつも、何でもないふりをして過ごしていた。行事の準備等にかこつけて、友達と、早朝に集まってみたり、暗くなっても帰らなかったり。今思えば、ただ、一緒にいたかったんだろうな。

《いつの日か どっちかが遠くに行ったりして
 会えなくなったりするのかな 今が嘘みたいに
 じゃあまた会えた時 今みたいに
 黙ったままで側にいられるのかな》

 卒業して、住む地方が離れてしまったけれど、お互いに、ほのかに想いを寄せていた彼がいた。離れていても、メールを送るタイミングが同じだったりして、繋がっているんだ、と信じた。信じようとした。でも、久しぶりに再会した時、以前と同じように、自然に側にはいられなかった。これで終わりにしたくなくて、一生懸命言葉を発して、お互いに疲れてしまって。それ以降、疎遠になった。そんなこともあった。

 そして、出逢った、BUMP OF CHICKEN。

《せーので全て飛び越えて 僕らのまま笑って
 裸足のメロディー歌うから そして一緒に手を振るんだよ
 笑顔のまま またねって》

 思い浮かぶのは、彼等のライブ。ありのままの自分をさらけ出せる瞬間。大勢の仲間がいる空間。でも1対1で、BUMPとぶつかり合う瞬間。終わってほしくない、一生今でいい、とまで思ってしまう、貴重な貴重な時。
 
 そして思う。こんなにも、胸を締め付けられるような瞬間を幾つも持っている私は、実は「幸せ」なのかもしれない。それが明確な「形」を持ってはいなくても。変わりゆく日々の中で、あの時に感じたこと、それが今も胸に残っていること、思い出せる人がいるということ。
 この曲を聴いて、思い浮かんだ人達。結局しょっちゅう会っている人も、会わなくなった人もいるけれど、皆、何処かで元気にしていてほしい。そして、できれば、笑って生きていてほしい。
 
 また、私に、このような気付きと、「幸せ」と呼べるかもしれない、温かい気持ちを与えてくれる、BUMP OF CHICKENのメンバーにも、そう思う。
 私がこれを書いている今、彼等がどうしているか、何を感じているか、私には知りようがないけれど、どうか、自分らしく生きていてほしい。
 私の人生は、もう折り返し地点を過ぎている。BUMPと共に歩む日々も、ひょっとしたらもう、そうなのかもしれない。起承転結で言えば転、春夏秋冬で言えば秋。
終わりを意識すると、とてつもなく切ないけれど、まだ終わってはいない。
 私なりの幸せの証に、『Gravity』という曲を抱え、またBUMP OF CHICKENとライブで会える日を楽しみにしながら、生きていく。また、会いましょう!
  
*本文中の《 》内は全て、BUMP OF CHICKEN 『Gravity』より引用
 
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