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形を変えても、変わらないもの

<Augusta Camp 2020>福耳のブレない、「生のライブを届ける」想いに希望をもらった話

無観客ライブ、舞台の生中継、スポーツ試合の生配信・・・
私たちの日常を襲ったコロナ禍によって、エンターテインメントを受け取る手段は様変わりした。
指一つでチケットを買い、その小さな画面でそのままエンタメも、完結する。
そしてたった数か月で、当初珍しかったそれらのコンテンツは、いまや新しいスタンダードになった。
そのスピード感に、テクノロジーの進歩の凄さと感謝を感じながらも、すべてのエンターテインメントが画面の中で消費されていく寂しさみたいなものも感じるようになったころ。

各種音楽フェスは軒並み厳しい選択を迫られるなかで、9月26日(土)、27日(日)に今年も開催を決めてくれた<Augusta Camp>。初の配信開催だった。
配信ライブと生のライブは「=(イコール)」ではないかもしれない、でも。
アーティストたちの底力を、音楽のすばらしさを、「生のライブ」の温度を浴びるように感じた、音楽ファンとしてとても幸せな2日間だった。

<オーガスタキャンプ>は、山崎まさよし、スキマスイッチ、秦 基博らオフィスオーガスタの所属アーティストが総出演する年に一度のお祭りだ。
華美な演出などではなく、楽曲の魅力、演奏の能力そのもので勝負するステージ。先輩、後輩が生の音楽ライブを存分に伝える1日。そんな印象がある。
クオリティーの高い且つバラエティーに富んだ、シンプルに「音楽」をしっかり届けるフェスを、毎年事務所単独でやってしまう存在は唯一無二ではないだろうか。
そして、所属アーティスト全員で構成するのが、スペシャルユニット「福耳」である。

さらに今年は“長男”山崎のデビュー25周年の記念の年。初めての配信2日間開催、特別な<オーキャン>になることは間違いなかった。

5人組新人バンドFAITHが吹かせる新しい風で始まった1日目の26日(土)は、おなじみ“福耳”全員のセッションで画面の向こうの観客を迎え、その後2〜4曲ずつ順番に1組ずつが、サポートバンドとともにそれぞれのステージを魅せた。スキマの「全力少年」、秦の「スミレ」(山崎のダンス付き)といったフェスに欠かせない定番ナンバーから、三線を手にした元ちとせによる奄美シマ唄「ワイド節」、竹原ピストルによる山崎の曲「未完成」の全日本詞書下ろしバージョンの披露まで、全組による個性豊かなステージが繰り広げられた。
コロナ禍のためか、1日目は例年と比べるとコラボの数は抑えめに感じたものの、それぞれの表現できる強い喜びとともに、こんな時だからこそ、個の良さをあらためてたくさんの人に見てもらうという意味もあったのかもしれない。そんな中、一組一組の演奏の中で展開された、さかいゆうとDedachiKenta、長澤知之と松室政哉のキャリアや音楽性の異なるそれぞれのセッションは見ごたえがあり、その化学反応で観客を大いに楽しませた。
最後、主役の山崎が登場と思いきや、ステージに上がるとすぐに“ファミリー”を全員呼び、自身の「Let’s form a R&R band」「セロリ」を後輩らとともに披露。アットホームで事務所愛を感じる一方、主役が控えめに見える終わり方だったが、2日目で山崎のワンマンが分厚く展開されたことで、納得した。

ということで2日目27日(日)は二部構成の1日だった。ナチュラルな雰囲気が魅力の女性シンガーソングライターOkayukaのアクトの後は、浜端ヨウヘイの力強いピアノ弾き語りから始まる、各アーティストのアコースティックセット。前日ドラマーとして出演していたあらきゆうこはスキマとともに山崎の「Passage」を原曲と全く違う表情に歌い上げた。山崎は、杏子の「ソノラマ」、さかいの「コイン」のそれぞれ山崎曲カバーでもコラボで自ら参加し、歴代曲のさまざまな色を魅せた。岡本定義(COIL)は福耳提供曲「八月の夢」を披露し、感動を呼んだ。
第二部は山崎の圧巻のワンマンパート。弾き語りに始まりドラムとベースを呼び込み3ピース、そしてストリングスカルテットとの共演、そしてバンドとストリングス全員集合と、代表曲「One more time, One more chance」 から最新曲「Flame Sign」まで8曲で25周年の歩みをしっかりと魅せた。
アンコールは福耳全員が山崎のお面を被って登場するサプライズで始まり、最後はもちろんフィナーレを飾る名曲「星のかけらを探しに行こうAgain」で情感たっぷりに幕を閉じた。
 
オーガスタのアーティストは、2月末まだアーティストの前例があまりない頃に無料配信を敢行したスキマを皮切りに、各自がさまざまなコロナ禍での音楽の届け方を模索してきた。その経験の積み重ねが、一つのチームになった時に強みになっている。
配信ならではのカメラワークの見せ方は、演者同士の目と目の会話、手元などを映し出し、これまでにない臨場感というライブの新しい価値を生み出した。
照明のこだわり、歌詞の演出といった細やかな工夫。しっかりと、ファンは受け取った。

それでも、やはりオーキャンは、華美な演出だったり、凝った映像技術や企画に頼ったりするいわゆる映像コンテンツではなく、
あくまでも「生のライブ」を届けることにこだわっていた。
オーガスタのアーティストの音楽の力そのものをシンプルにガツンと届ける、というオーキャンの目的というか軸みたいなものが、全くブレていない。
色々ギラギラし飾りが多くなった現代になった今でも演者たちが失いたくないもの、
そしてそれを楽しむことを「落とさずに持っていてよ」と、
ファンに失ってほしくないものを投げかける。
 
音楽の力。
最後の杏子のMCは、発信側からもそれを届けたいという思いが強くあったことを思い知らされる。

野外フェスの楽しさとか、一体感の醍醐味を追求してきたオーキャン。全く新しい形でやるという、難しさや葛藤は相当なものであったと想像できる。今年は「やらない」という選択肢の方が簡単だっただろう。アンコールで杏子は、「音楽の力を信じている」と言って、声を詰まらせた。

コロナ禍で配信コンテンツが一気にあふれたように、時代の変化はネットの技術とともにものすごいスピードで迫る。
音楽業界は中でも速度は早く、曲の聴き方もネットの時代でどんどん変わっていく。
そしてこのコロナ禍で、ライブが近くのライブハウスで、ホールで、アリーナで、ドームである日常が突然なくなり、全てを画面の中で得ることができるようになってしまった。

今回のオーキャンは、
そんな人々に生のライブの良さを、音楽の楽しさを、改めて感じてほしい、思い出してほしい。この鬱々とした日々の中で、しんどくなって音楽から少し離れていた人にもまた音楽の力を届けたい、そして自分たちも、その力を信じたい。
ライブ会場でまた必ず会おうと、音楽業界全体の思いも背負って、投げかけているような気もした。

オーガスタキャンプは1999年、山崎まさよしの単独野外コンサートとして誕生し、仲間を増やしながら毎年恒例のイベントへと発展した。今年はその山崎のデビュー25周年。まだ画面越しにしか演れないもどかしさ、オーガスタの“長男”の節目にあたって強く感じた悔しさや責任。でも、アーティストそれぞれツアーやイベントがなくなってきた、何もできなかった時期からして、こうやって仲間とまた音を届けることができることとなった、感慨…。いろんな感情を含んだだろうその涙はファンの心にも深く刻まれた。
  
私たちは、この新しい生活で、会議や打ち合わせもリモートでできること、人に会いに行かなくても生活が成り立つことに気が付いてしまった。
便利で、エネルギーを使わない。だけど、人と人とのつながりは薄くなり、自分の中で未来を思い悩み、悲しいニュースにも影響されて気がつけばふさぎ込みがちな日々。

オーディエンスに演奏を聴かせることを生きがいにしているアーティストや音楽関係者の苦悩は、なおさらと思う。
そんな中で、こうやってブレずに、困難を乗り越えて柔軟に変化に対応し大きなパワーを発信するアーティストとスタッフたち。
2日間でなんだかものすごいキラキラとした希望を見せつけられて、
こっちも頑張らざるを得ないじゃないか。

それに、「次はこのライブがみたい」「あの〇日の配信見てみようかな、あの曲が聞けるかな」。そんな楽しみ一つ二つを先に見出しておくだけで、鬱々とした毎日の中でそれまでを生きるちょっとした糧になってしまうことがある。大げさでなく。
エンタメや音楽の力って、やっぱりすごいと思う。
野外で対面して思いっきり一緒に歌えるライブに行ける日まで、頑張らなきゃと思う。

そういうことを書いているうちに、そろそろアーカイブ配信が解禁される。
私は明日を生きるために、また夜な夜な寝不足で<オーキャン>を見るのだろう。
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