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待ち焦がれた、その先に

パスピエが8ヵ月ぶりの有観客ライブAJIMIで魅せてくれたユートピア

"拝啓 未来のある日の皆様へ
長くて短い手紙をしたためたんだ
届いていますか 覚えていますか
今日は記憶になってますか"
 
2020年10月16日、SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにてパスピエの8ヵ月ぶりの有観客ライブが開催された。
チケットはファンクラブ会員のみで抽選が行われ、同時にライブ配信も実施された(こちらは誰でもチケットの購入可能)。

パスピエが観客を入れたライブを最後に行ったのは、2月16日、特別記念公演"EYE"。
偶然であったのか、意図的であったのか、まさにぴったり8ヵ月ぶりとなった。

この8カ月の間に、パスピエは音源を2曲リリースし配信ライブを2回(内1回はUNISON SQUARE GARDEN主催のオンライン対バンイベント)を行っていた。

やっと、この目でパスピエの生のライブが見れる、生の音が聞ける。この日をどれだけ待ちわびただろうか。

あまりに久しぶりの体験がゆえに、ドリンク代の存在を直前まですっかり失念していたくらいだ。

まるで小さなシアターのような会場に入り、ステージ上のバンドセットを目にした時は本当に胸がいっぱいになった。8カ月前までは当たり前に見ていた光景だったのに。
 
17:30、SEが流れる。鼓動が高鳴る中、パスピエメンバーが登場した。

目の前に、大好きな大好きなバンドが、存在している。

1曲目は、<ヨアケマエ>。
"待ってました 出ました お出ましだ 最新が最高 当然でしょ"
 
そう、この目で見ていない間にもパスピエは決して止まってなんかいなかった。進化をしていた。
成田さんはこういった状況下の制作において「こういう状況だからできることもある。」と言っていた。

パスピエは絶対に止まらない。ライブ数日前には12月にフルアルバムがリリースされることも発表されていた。

そんな最新のパスピエのライブが幕を開けた。
 
間奏ではお決まりのクラップが客席から起こる。
歓声は出せない。でも、表情や身振り手振り、拍手できっと気持ちは伝わる。

客席からの思いのこもったクラップに、ボーカルのなっちゃん(大胡田なつき)がとびきり嬉しそうな表情を見せた。
 
この日を待ちわびたのは、私たち(ファン)だけじゃ、ない。
 
まさに長かった、長すぎた夜が明けたようだった。眩しかった。気づけば涙が溢れていて視界はぼやけていた。

そしてそこから<MATATABISTEP>、<術中ハック>と盛り上げていく。
今までみたいに一緒に歌うことは、できない。

でも、みんなそれぞれが気持ちで返していたように思う。ライブの熱さが確かにあの空間にあった。
 
まだ生のライブでは2度目のお披露目である<まだら>も今となってはもはや新曲ではなくなっていた。

「嬉しすぎてにやにやしちゃう。声が上ずっちゃう(笑)」と、MCでは本当に嬉しそうににこにこと話しながら、「(公演名)AJIMIとはどういうものなのか…というのを楽しんでもらえればと。」と続けた。

成田さんも「嬉しいね。」とこの時間をかみしめているように見えた。
 
その直後、ギターの三澤さん(三澤勝洸)とベースのつゆさん(露崎義邦)がばっちりアイコンタクトをとってはじまったのはこれまた生のライブでは初披露でありながら新曲ではなくなってしまった、<真昼の夜>。

想像以上に音の迫力があり、配信ライブで見た時と大きく違って聞こえて、ライブの凄さを感じた。
楽しそうに飛び跳ねているなっちゃんの姿も印象的だった。
 
そして、イントロから成田さんのキーボードが凄まじい<グラフィティー>、続けて<ハイパーリアリスト>。

この日のハイパーリアリストは特に響いた。

"何千回だって 何万回だって もっとリアルに鮮明に描くよ 何千回だって 何万回だって 忘れないようにまた描くよ 何千回だって 何万回だって ”

着席のライブなんて関係なかった。腕を高く、強く上げていた。
 
<始まりはいつも>、この曲はmore humorに収録されており、当時作詞のなっちゃんが「今私がみんなに伝えたいこと」と言っていた曲だ。

 more You moreツアーでは間奏でなっちゃんが「パスピエとずっと繋がっていてくれ!」と叫んでいたのが鮮明に思い出される。
そしてEYEでも、パスピエが好きでよかった、と強く思わせてくれた曲でもあった。
メンバーに強い思い入れがあるのと同じように、ファンにとっても大切な曲となっていたに違いない。

その曲中、なっちゃんが思いが溢れて泣いてしまい歌えなくなってしまうということが起きた。一生懸命こらえて歌おうとするなっちゃんと、それを本当に優しい表情で見守っているメンバーたち。

その姿を見て、私も涙が溢れてしまった。

私たちファンがこうしてまたパスピエと向かい合ってライブができる日を、待って、待って、ひたすら待ったようにパスピエだって待ち望んでいたんだと、強く感じた。それがすごくすごく嬉しかった。

ずっと、音楽を通じて繋がっていたよ。  
 
ファンの強い気持ちは絶対にステージに届いていたし、ステージからも同様に伝わってきたのだ。その空間は暖かくて、幸せでいっぱいで、感動的だった。
あんなに素敵な時間を共有できたことは、どれだけ嬉しいことだろう。
 
直後のMCでは、成田さんに「最後の曲みたいになってるけど(笑)」と茶化されるなっちゃん。

「私たちも久しぶりで、どういう感じになるかわからなくて…でも、自分がこんな感じかなー?って思ってたよりもずっと、みんなの気持ちが伝わってきて…泣いた!笑」

「私あんまりこういう(ライブで感動して泣くような)タイプじゃないと思ってたんだけど、人生わからないですね。」
 
そして。公演名のAJIMIの所以が成田さんにより明かされた。

「絶賛アルバムを制作中なんですが、すでにできあがった3曲の音源を、この場で一緒に聞こうと。」

「俺たちもこうしてスピーカーでおっきい音で聞くのは初めてなんだよね。」

12月にリリースのアルバム、synonymから3曲を今から流すということだった。

新曲をライブ披露する、ではなく"一緒に聞く"。こんな経験はさすがに初めてだ。本当に出来立てほやほやのパスピエの"最新"を聞けることが嬉しいと同時にワクワクした。
 
1曲目はベースラインが特徴的なバンドらしい曲。ここ最近のパスピエの曲の傾向からしたらかなり違った印象。パスピエのロックバンドとしての良さが存分に出ており、1曲目からかっこよくアルバムの期待値もぐっと上がる。「バンドっぽいよね」という成田さんの言葉通り、キャッチーな側面のパスピエといった感じだ。
 
2曲目はなっちゃんの声が透き通る、また1曲目とは全く異なる優しげな印象の曲。「アルバムを作るときはバリエーションを気にしてるからね。」
 
3曲目は短調的な、成田さん曰く「ダークネスな感じの…(笑)」曲。個人的にクラシック要素が感じられて、成田さんらしい曲だと思った。
 
この場で聞いた3曲をもっと何度も聞きたいと思ったし、また新しいパスピエであるという確信を得て、アルバムの他の曲も一層楽しみになった。
きっと既にリリースされている配信シングルの曲たちもアルバムの1ピースとなると聞こえ方も変わるだろうから、それも楽しみの一つである。

ニューアルバムの"味見"が終わったところで、「もう一曲新曲として出していたのがあるので」と演奏に戻ったのが<SYNTHESIZE>。

これも配信ライブでしか聞いたことがなかった曲だ。とても心地よく、自然と身体が揺れてしまうようなパスピエらしい曲。
何度もライブで聞いたらこんな感じかな?と想像していたので、ようやく念願がかなって嬉しかった。
 
続くライブ定番曲<シネマ>はサビでみんなが手を振るのがお決まりで、それがまたこうしてできる喜びをかみしめた。本当に、"そこはまるでユートピア"だった。
 
最後のMCでは、なっちゃんの「パスピエでいさせてくれて、ありがとう。」という言葉が非常に印象的だった。
そういった言葉の選び方ができるのが、なっちゃんの素敵なところだと思う。
 
心の底から伝えたい。
 
「パスピエでいてくれて、ありがとう。パスピエの音楽を届けてくれて、ありがとう。」
 
このバンドのファンになれて本当に良かった。パスピエに出会えてよかった。
 
この日を締めくくったのは、<カーニバル>。これは誰も予想できなかっただろう。この曲がライブで披露されたのは実に7年ぶりだった。
 
たった1時間だったけれど、すごくすごく濃い時間だった。キラキラして、幸せで、貴い1時間だった。
終わった後はなんだか満たされすぎて、放心状態になってしまった。

パスピエのライブは雨の日が多い。でも、この日は降っていなかったね。
 
また、2公演目では12月に次のライブが開催されることが発表された。またひとつ、楽しみが増えた。
 
 "以前のように"まで戻るのはまだまだ先かもしれない。いつになるかもわからない。  
それでも少しずつ、日常だった大切なものが戻り始めた。
 
時間が経って振り返ったとき、この日がひとつの素敵な思い出になっていますように。
 
"前略 思い出の中の貴方様へ
長くて短い手紙をしたためたんだ
大人になったら何をしてるかな
なんて語り合った夢を"
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