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ヒトリエの新曲≠wowakaさんの新曲

故人は何も語らないからこそ

ヒトリエがデジタルシングル「curved edge」をリリースし、そのMVの公開とYouTubeでのオンラインライブ「HITORI-ESCAPE 2020」を行ったのが12/7のこと。

そのオンラインライブの話をする前に、少し2019年の話を。令和を前にしたあの日、ヒトリエの核として歌を作り歌を歌っていたwowakaさんが亡くなった時には、正直僕はもう新曲は出ないものだと思っていた。解散はしないと宣言した彼らを信用していなかったわけではない、「ヒトリエの新曲」がまるで想像できなかったというのが正確なところだ。

ベストアルバム「4」の特典映像でwowakaさんが歌い踊り奏でる音、4人のヒトリエが奏でる音。その後にあったオンラインライブで3人のヒトリエが奏でる音。そこにはどうしようもなく隔たりが、違和感が、もっといえば喪失感があった。ライブステージの真ん中は空いたままで、スリーピースの音が響く。好きな曲であり、楽しいライブではあったのだが、それでも。僕は長らく、そこに4人のヒトリエがいたらというもしもに縋り続けていた。

だから、新曲を出すという発表があった時は驚いて驚いて、そしてそれから怖くなった。スリーピースに感じる違和感は、逆に言えば「wowaka」という1人がそこにいたことの証明でもあったから。それを失ってしまうことが、怖かった。

そして、新曲「curved edge」が公開されて聴いた時。震えた。格好がいいイントロ、早い節回し、好きな曲であると断言できる完成度。ただ、何度聞いても、「wowaka」が作った曲とはフレーズも歌詞も決定的に違った。「wowaka」がいなければできないことはたくさんあるということは曲からも伝わってきた。

だが、そう、それ以上に感じたのは、ヒトリエのメンバーの、先に進むという「覚悟」だった。

「ほらbring it back to me、不自由な心
ただならなくて、ままならなくて 何かちょっとヤな感じ
君ならどうすんの、駄作と解っても
消え去りたくない、壊されたくない
ほら面倒臭いね 帳消しにしちゃいたいね」

wowakaさん作詞の既存曲よりも直接的なシノダさんの歌詞からは、wowakaというあまりに大きな存在が消えたことに対する苦悩も不安も悲しみも感じる。だが、ラスト、

「こんなクソみたいな現実見させられてもまだ尚、
僕ら不健全な瞬間に飢えて飢えて仕方無いのさ
やめられやしないね、もう戻れやしないね
ほら面倒臭いフレーズ 聴神経に突き刺され」

ここで彼は宣言する、もう戻れやしないと。

そもそもが今年は新型コロナウイルスの影響でライブハウスが使えず、人前でのライブ機会は年始からほとんどない状況(ここら辺はライブのMCでもシノダさんがネタにしていた)。ベストアルバム発売時のライブでも「このクソみたいな2020年に、wowakaより愛を込めて」と叫んでいた。そう、クソみたいな現実なのだ。

それでも続けると。その言葉通り、オンラインライブは始まった。初っ端からハイカロリーな曲を連打し、初めのMCではもう汗ぐっしょりで、それでも、聴く人を楽しませる音を、ヒトリエは奏でた。あいも変わらず真ん中は空いたまま、3人で。

そして、ラスト。新曲を歌う前に、MCでシノダさんは言う。「アルバムを出します」と。

ヒトリエは止まらないのだな、と。そのあとの「curved edge」を聴き終えてから思う。正直情報量が多すぎてライブ中何を考えていたかは覚えていない。ただ、彼らはヒトリエというバンドが忘れられないよう、あるいはもっと根本的に、ヒトリエとしてライブを楽しむために、今後も活動するのだろうと思った。

今後、wowakaさんの新曲が出ることはない。故人は何も語らない。天国の彼に、なんて言ってみたって、結局故人は聞く耳も歌う声帯も踊る体も持たない。しかし、wowakaさんが集めた「ヒトリエ」というメンバーやその楽器は事実としてここにある。

wowakaさんはヒトリエの核だった。あるいは、今も核であるのかもしれない。ヒトリエが「wowakaさんのバンド」と呼ばれるのをたまに目にする。それはwowakaさんという1人の偉大な才能の証明だろうし、仕方のないことなのかもしれない。3人のヒトリエは、4人のヒトリエを越えられないのかもしれない。僕も「curved edge」は好きだが、「SLEEPWALK」や「ローリンガール」、「カラノワレモノ」と並ぶかと言われたら、そこまでではない。

だが、それでも「curved edge」は、歪曲した刃は、確かに僕の聴神経を貫いた。だから、僕は今後も「3人のヒトリエ」を追おうと思う。ライブで初めて、スリーピースに違和感を感じなかった、あの喪失感を感じなかった曲を聴いてそう思った。だって、たとえ「3人のヒトリエ」に違和感を覚えなくなったとしても、強固で最強の「4人のヒトリエ」は消えないから。消えるほどやわな強さじゃないから。


ヒトリエを「かつて好きだったバンド」としてではなく、「今も好きなバンド」として、曲を聴ける、追える。それができることが、ヒトリエが活動を続けてくれるということで。「curved edge」が、僕らにくれたものだと思う。


新アルバム「REAMP」、非常に楽しみです。
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