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ストレイテナーがおしえてくれた「さよなら」はかっこいい

いつもの海と今年最後の海で君に会いたかった

ストレイテナーの12月といえば、毎年忘年会のように新木場で行われているワンマンライブがある。新木場での冬といえば、海風に曝されながら入場を待ち、終演後は心も体も温まり湯気を立てながら外に出るのが見慣れた光景である。
今年は原点回帰とも言える渋谷クラブクアトロでのライブとなった。そして、これがストレイテナーの今年最初で最後のワンマンである。

ライブが生配信されることもありスタートはいつもより遅い20時。
振り返ると今年は、「いつも」のような言葉を使って、今までの日常と比べたがる性格になってしまったようだ。「昔は良かった」みたいな口癖にならないように気を付けたいものである。
暗転するまで会場内の様子が映される。マスク越しでもオーディエンスの顔がワクワクしているのが分かる。そんな様子を見ながら、テナーの生配信ライブを楽しむことができる時代を、「良い時代になったものだ」と言うのは、体がベッドから動けなくなるくらいのケガとか大病を患った時にとっておくことにしようと、ついついどうでも良いことを思い浮かべていた。

暗転、そしてSEが鳴り響く。長年Doshの「MPLS Rock and Roll」が使われていたが、去年のミニアルバムに収録された「STNR Rock and Roll」にてメンバーが登場。(こう見返すと曲名似せてたんだな。)

今回のライブは、ニューアルバム「Applause」が発売された直後ではあるが、それを引っ提げてのツアーは年明けに予定されている(是非開催して欲しい、そう願うばかりである)。
ということは、今回はその前に配信されていた「叫ぶ星」と「さよならだけがおしえてくれた」のレコ発ということになる。つまり、普段でさえどんな曲をやるのか読めないテナーのセトリを推測することが、もう一段階難しくなったということである。

まさに暗闇の中を走るジェットコースターのような期待と不安。
そこから始まった1曲目は、新曲「叫ぶ星」だった。
超新星爆発による一瞬が起こす奇跡を出会いと別れに例えた「ザ★ストレイテナー」という曲である。ホリエさんも星が好きな一人である。

そこからは12月ということもあり、冬の名曲がズラッと並ぶ。この中に「冬の太陽」がいなくてもセトリに厚みがあり、熱さがあるのが20年以上ライブバンドとして君臨してきたテナーの懐の深さである。

席があることを考慮してのセトリということもあり「彩雲」、「Graffiti」といったアコースティックギターが伸びやかに広がる曲が演奏される。
そう思ったら、「DAY TO DAY」が唐突に入ってきて、冬晴れというよりは春や夏の晴れの日を感じさせる。やはりセトリが見えないライブである。
ロックな曲が入り、続くかと思うと、そこから鍵盤曲が3つ続く。

最近の冬は、自ら冬の名曲と言い切った「灯り」を聞く機会が多い。
ただ、今回の「灯り」はホリエさんがつまる部分があった。
果たしてこれは、オーディエンスの前で歌う機会が少ないことによる緊張なのか、喉が万全な状態ではなったのか、それとも込み上げるものがあったのか……。

「さよならだけがおしえてくれた」が演奏された後に、だいぶ長ーーーーーいMCが行われた。
ここだけを切り取れば、トークイベントである。そのくらい長かった。
いつもは止めに入るOJですら話に乗っかる。
きっと、メンバーは楽しかったのだろう。

なんとか、演奏に戻ることができたテナーはここで、意表をついてきた。
「メロスト」と「シーグラス」という終盤の定番曲をセトリの中間部分に持ってきたのである。
いや、この2曲がいつも最後を任されるとは限らないのは分かっていたことだが、ますます、この後の展開が楽しみになってくる。

そう思っていた矢先に、ホリエさんが「今、一番歌いたい曲」と伝え、「No Cut」が演奏される。ライブ初披露の曲であり、ニューアルバム「Applause」がこんな時代に我々に届けられた理由がギュッと詰まった曲であり、このアルバムの根幹と言っても過言ではない。
最近の歌詞の中でもストレートな曲である


“ありふれた言葉さ
でもそれが真実で
混じりっ気なく 向き合えた気持ちで
朝も夜も夢の中でも
会いに行きたい 心からそう思うよ
きみだからそう思うんだ”(No Cut)


これだけを読んだら照れてしまう歌詞も、曲に載せたらさらっと言えるのだろうか。
それとも、この特殊な1年を経験した僕らだから照れるような言葉もすんなりと心に取り込むことができたのだろうか。
不思議な気持ちにさせてくれる曲である。別にモッシュをしたわけではない。手を振り回すような曲でもない。一緒に歌うわけでもない。
しかし、心をぎゅっと掴んで離さない曲である。

最近のストレイテナーのMCが長いことで、人間味を感じることがある。
ストレイテナー自体が温度を持つようになっている。
昔から熱いバンドではあるのだが……、うーん、そのあたり皆さんに伝わりますか?笑

「スパイラル」も僕とストレイテナーの曲である。でもどちらかというと地方に遠征した時に出会う方達との曲。今は疎遠になってしまった友に宛てたような手紙。そう思わせてくれる親近感がある。

このまま、ほっこりとライブが終わるのだろうか。
配信ライブだし仕方ないよな。と、少し残念そうにしている自分がいる。
『コロナウィルス、ライブ空間をも蝕む!』と心の中で諦めかけたときに、死神みたいにニヤッと笑ったフロントマンが「最後ロックして終わりたいと思います」と宣言した。その八重歯が憎いぜ。
披露された曲は、「Applause」の中で一番凶暴な曲「Death Game」(曲名が既に凶暴)。

“真っ昼間に 寝ぼけてんじゃねえ”(Death Game)

『今年1年間のありとあらゆる制約の中で心を殺していないか?家の中で閉じこもったままで、心を躍らせないと棺桶の中にいるのと同じだぜ?』と、棺桶をぶっ壊しに来てくれた。
少し前まで隣にいた友人の手荒な抱擁に心が沸く、テナーってこういうやつだったわ。そう思い出す。
そこから「From Noon Till Dawn」が演奏される。

“この世は素晴らしい”(From Noon Till Dawn)

ライブによく参戦される皆さんであれば、曲の途中のこの部分がライブ会場の地名になったりするのをご存じであろう。だから、今回は何が「素晴らしい」と歌うのか期待したのではないだろうか。
しかし、ここでも予想とは違ってど真ん中のストレートを投げてきた。なんの細工も無く歌い上げる。意表を突かれて見逃し三振をした後に、心にぶつかる。

そうだな、今日は『この世は素晴らしい』でいいんだ。
そう思うためにみんなここに集まったんだ。
みんながそう感じたのではないだろうか。

そこからの「YES,SIR」は、あわてんぼうのサンタクロースがプレゼントを届けに来て、中身がびっくり箱だったくらいに驚いた。
サンタクロースにとっては箱の中身は関係なかったようで、プレゼントを届けられたことに満足げな顔で、僕らもそんな楽しそうな笑顔を見せられたら箱の中身(セトリ)なんて関係なかった。

アンコールに出てきたメンバーは、また満足そうな笑顔で楽器をとり最後のプレゼントを置いていった。
知らないイントロである。ひなっちのベースにOJのギターが続く。

ホリエさんが口を開いたときにそれが「ROCKSTEADY」だと分かった。
そうだよ、こういう時は「ROCKSTEADY」じゃないか。
ここだけはセトリ予想で唯一分かった部分ではないか。

“僕等は進まなくちゃ 先を急がなくちゃ”(ROCKSTEADY)

そう歌い続けたバンドではないか。
この曲がアレンジされるのは珍しいことだ。前にサビのドラム部分がメロコア風になり、左回りが勃発しそうな時もあったがまた元の形に戻った。

アレンジの多いテナーでほぼほぼCD音源のまま演奏されることの多い”ROCKSTEADY”が、ここに来て変化を見せ始めた。『僕等は進まなくちゃ 先を急がなくちゃ』を体現しているようである。

今年の年越しを楽しみにしていた。
07/08で初めてCDJの会場に足を踏み入れた。その日はテナーがEARTH STAGEの3日目のトリだった。今でも思い出す、イントロが原型を留めていなかった「KILLER TUNE」で間奏の時にはホリエさんがご乱心かと思わせるようにキーボードを文字通り「ジャーン」と叩いたり、ひなっちが三味線のような音を「BERSERKER TUNE」響かせたり、汗だくで髪の毛が顔にへばりついたロン毛時代のシンペイさんを。
そこから毎年年末に幕張に足を運ぶサイクルができ、ついにストレイテナーがカウントダウンを担当する年に巡り合えたのだ。
仕事が手につかなくなる高揚感を感じていた。今年は海にも行ってないな、幕張ってなんだかんだ海が近いよな。

“今年最後の海へ向かう”(シーグラス)

『大晦日』に幕張で「シーグラス」が聞けたら最高だな、そんなセトリ予想をしていた。
だが、結果は皆さんご存じのとおりである。

そうなると、今年ストレイテナーに会えるのは、アーカイブが残る数日間だけとなってしまった。
そこから改めて見返したときに、ホリエさんのある言葉の意味を痛感した。
「さよならだけがおしえてくれた、かっこいい」
個人的には、かっこいいは「叫ぶ星」に使う言葉なのではないかと思っていた。
しかし、

“さよならだけがおしえてくれた
 震える声が解いてくれた
 抱きしめればすぐ壊れてしまうほどの
 儚い希みを守りたいから
 未来を背負いたいから”( さよならだけがおしえてくれた)

今のこの状況を最初から知っていたかのような歌詞に、今のこのどうしようもない気持ちが救われた。
今年もありがとう、来年はたくさん会えるといいね。
さよなら。
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