4537 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

ロックとポップスの交錯

The Birthday「 I'M JUST A DOG」 10周年

昨年11月18日(水)に行われた「GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020」のNHKホール公演をみた。
新型コロナウィルス感染症により今年の彼らのツアーは縮小され3日のみの公演。
フジイケンジ加入10周年のワンマンはこの3日に凝縮された事になる。

アンコール最後の曲はフジイケンジ加入後の初出曲で「I'M JUST A DOG」に含まれている「なぜか今日は」だった。


チバユウスケとフジイケンジのタッグは10年前から、前ギターのイマイアキノブの脱退がきっかけである。
チバユウスケとイマイアキノブはROSSOから始まり、今でもMidnight Bankrobbersで蜜月を交わしている仲で、側から見ても近いメンタリティを感じる2人だ。

そんなイマイアキノブの後任がフジイケンジとなった。


MY LITTLE LOVERの元ギタリストであり、AKB48やSMAPなどJ-POPど真ん中のアーティストをサポートしてきたフジイケンジ。耳障りが良く完成されたギターの音。イマイのギターとは対照的にそれは開かれていた。

日本のロックの精神的支柱とも言えるチバユウスケとタッグを組むという事は表面的に見れば上手くいかない事だろう。

もちろんフジイケンジの高い技術がアーティスト側からのオファーを呼ぶのだろうが、チバユウスケとのメンタリティとは異なる世界にフジイケンジはいた。

チバユウスケの刺すようなヴォーカルはギターを選ぶ。誰からも受け入れられ誰からも好まれる、そんな毒にも薬にもならないものは求めない彼のメンタリティは声そのものだ。

フジイケンジとは音もメンタリティも相性が良いとは思えない。しかしロックバンドは表面をみただけではわからないものが生まれるから面白い。

最高にロックンロールな傑作が生まれている。10年前にリリースされたフジイケンジ加入後初アルバムの「I'M JUST A DOG」は今でもセットリストの中核である。



"汚れたよ あんたから見りゃ
自由ってもんは そんな甘くは無いんだって"
「SとR」


大衆迎合的。フジイケンジと組む事についてチバユウスケ自身がそう思ったかもしれない。ロックへのリスペクトを表現し続けてきた彼だからこそ、葛藤があったはずだ。その葛藤がこの一節には含まれている。


"パーティーがまた始まる"
「Buddy」


"忘れてしまおうと思ってたけど
爪痕 消えなくて"
「爪痕」


"テレビが飛んで ドアが無くって
それで笑った"
「READY STEADY GO」


THEE MICHELLE GUN ELEPHANT時代を彷彿させる言葉の数々。チバユウスケ自身が歩んできた道を、アイデンティティを確かめているかのような言葉。それはフジイケンジと組む事で必要になった、過去を振り返る作業だったに違いない。

フジイケンジがチバユウスケのロックンロールを引き出し、チバユウスケがフジイケンジのロックンロールを引き出した。
未曾有の震災の年にリリースされた「オレはただの犬」という皮肉につけたタイトルのアルバムが、今でも私の中で「挟持」というものを再確認させてくれる。


NHKホールでチバユウスケは笑っていた。
交錯の先に合ったのは自分自身と言ったら月並みか。彼の笑顔にこれから先何度でも、満たされるんだろう。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい