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慕情を呼び起こす曲 KEYTALK「OSAKA SUNTAN」

歌詞に見る、往年の名曲との共通点

KEYTALKのメジャー1stシングル「コースター」収録の「OSAKA SUNTAN」。
リリースは2013年11月とかなり前で今更感は否めませんが、それを承知の上でのご紹介です。

いわゆるカップリング曲なのですが、作詞作曲をした首藤義勝が「リード曲を作ろうという気持ちで作った」と述懐してもいた*ように、「コースター」をさしおいて表題曲となっていてもおかしくないと思うくらいよくできた曲です。

さらにこの曲は歌詞から物語を連想しやすく、これは歌詞に明確な設定がない傾向が多いKEYTALKの曲にあって珍しいタイプかもしれません。

リリース時のインタビューでは、義勝の口からその設定がはっきりと打ち出されています。
「冬の時期に、日焼けの跡を見て夏を振り返っているみたいな感じ」**とのことでした。

タイトルに「OSAKA」とあるくらいですから、大阪での楽しかった夏のひと時を、寒い時期に消えかかっている日焼け跡とともに懐かしんでいるような世界観でしょうか。
さらに言葉を加えると、歌詞に「君」とか「二人の」などの言葉が出てくるため、そこには大切な人がいるのかもしれません。

切なげなメロディーに乗った歌詞は、そうした楽し寂しい感情を追体験させてくれるかのようにこちらに迫ってきます。
慕情を呼び起こすとでも言うのでしょうか。

では、どういった点に慕情を呼び起こす部分があるのでしょうか。
ここからは、一部分ながら「OSAKA SUNTAN」の歌詞を切り取り、その核となりそうないくつかの言葉に迫りつつ曲のご紹介をしていこうと思います。

結論としては、西への距離感の遠さを感じさせる、という点に慕わしさが隠されているのではないかと思います。

ここでの西というのは、タイトルにもあるように大阪のことを指しているのだと思いますが、その対照である東として当てはまるのは東京あたりなのかなと勝手に想定します。

例えば、1番サビのこの歌詞。

【遥か西 遠ざかる夕焼けに心揺れる 地球の裏側に消えてしまう消えてしまう】

徐々に地平線の向こうに消えていく西の地を「地球の裏側」と形容しています。
「遥か西」はあくまで大阪なのですが、消えゆく向こう側はまるで地球の裏側のようだと表現することによって実際以上の距離の遠さを感じさせます。

夕焼けがどんどん小さくなっていき、はるか向こうの地平線に消えてしまう。

そんな情景がありありと頭に浮かぶようですし、「消えてしまう消えてしまう」と同じ言葉が重ねられることによって、西から「遠ざかりたくない」という願望や、それがかなわぬ無念まで強調されて伝わってきます。

また、同じ箇所の2番サビの歌詞を眺めても、別の角度からの詩的な表現によって西の遠さが強調されていることがわかります。

【車輪は東へと運んでいく冴えない歌】

1番サビの歌詞とのつながりで、こちらも大阪(西)を背に、乗り物に乗って東へ向かっていく状況を表したものであり、1番の歌詞の言い換えと考えられます。

ところで、ここでの「車輪」がさす乗り物とはなんなのでしょうか。

車なのか新幹線なのかはたまた飛行機なのか。
歌詞ではこれ以上は明示していなく、もちろん正解なんてものがあるとも思えませんが、僕が思い浮かべるなかでしっくりときたのは「汽車」でした。
いわゆる蒸気機関車、SLの類いです。

というのも、ここの歌詞では車輪を主語とし、それから発せられる音のことを「冴えない歌」に例えています。
特定の乗り物ではなくその足たる車輪がメインとなることは、乗り物よりもそれにつけられた車輪自体が存在感を放っていることが推測されます。

それを思うと、考えられる乗り物の中では、大きい車輪が目立つ汽車がまっさきに当てはまるような気がするのです。
大きさだけでなく、レールにこすれる音やそれに付随して汽笛の音なども存在感があり、なるほどこれらの音の重なりは、まさに歌詞にある通り「歌」のように聞こえるかもしれません。

汽笛を時折上げつつ、汽車が西を出発し、夕焼けから遠ざかっていく。

汽車だと考えて解釈を進めると、西(大阪)から東に向かうのにもかなり時間を要することが想定されます。
今のような新幹線で片道2時間半程度の旅とはいかないでしょう。
一日になん10本も往復できるような便数があるとも到底思えません。

汽車を連想させることによって、手軽なアクセスが難しいことを強く意識させられます。
ここでも、実際の距離以上の遠さを感じます。

何度も言いますがこの解釈が正解かは分かりようがありませんし、新幹線を使ったとしても大阪-東京間が遠いことには変わりありません。
ですが、汽車という単語が想起させるところの距離感といった視点で観ていくと、ここまで書いてきたことに説得力を持たすかのような往年の名曲にたどり着きました。

かぐや姫の「なごり雪」です。

【動き始めた 汽車の窓に 顔をつけて 君は何か 言おうとしている】

この曲においても汽車という言葉が出てきます。
もちろん他の歌詞と相まってのことでしょうが、ここでも汽車という単語によって慕わしさとともに、もう二度と会えないんじゃないかという距離感がいみじくも表現されているように思えてなりません。
時代が違うといわれればそれまでですが、この歌詞がもし「電車」だったらもう少し違った捉え方をされていたのではないでしょうか。

「OSAKA SUNTAN」と「なごり雪」。
両者はロックとフォークソングという点で全く違う曲ではあるのですが、図らずもリンクする部分がありました。
歌詞から読み取れる設定も、大切な人と二度と会えないのではないかという寂しさを感じさせているという点で似通っています。

ところで、「OSAKA SUNTAN」でタイトルに大阪(OSAKA)を入れたことについては特に意味はないようで、義勝は「地名であればどこでもよかった」とコメントしていました。
関西になんとなくの憧れがあったとも。

ですが、結果としてこの大阪という地名こそこの曲にぴったりはまっているように思えます。
先述したような「地球の裏側」や「車輪」といった言葉によって呼び起こすイメージと実際の大阪-東京間の現在の距離感との間には大きなギャップがあり、そのギャップというか違和感がなんとも言われないノスタルジックな感情を引っ張り上げているような気がするのです。

「OSAKA SUNTAN」の魅力はこれだけでは語り切れなく、メロディーの節目にボーカルの寺中友将と首藤義勝との間で綺麗なバトンタッチがなされるところや、歌詞の慕情を増幅させるようなギターの魅惑的なメロディーなど様々なポイントがあります。

そもそも、今回見ていった歌詞ですら、サビのごくごく一部分しか切り取っただけにすぎません。
ですが、こうしてポイントを絞ってつぶさに見ることで、KEYTALKに関してたびたび評される「文学/詩的」な要素を多少なり味わうことができたような気がします。
図らずも名曲ともリンクするような部分も見られました。

ファン目線では文学的に捉えられる一面があっても、対外的には「お祭りバンド」という目線で見られるKEYTALKですが、こうした解釈の余白を生むような良い曲はまだまだたくさんあります。
今後もなにかピックアップしてお伝えできたらと思うばかりです。

[出典元]

* BARKS【インタビュー】KEYTALK「メロディは群を抜いてどのバンドよりも良いという自信はあります。奥深いポップ・ロック・バンドです」(2013.11.19)
** ORICON MUSIC KEYTALK『メジャーデビュー作&バンドの個性に迫る』(2013.11.20)
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