4729 件掲載中
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

緊急事態宣言下に聴くMr.Children

キャリア最高傑作『SOUNDTRACKS』について

Mr.Children渾身の1作、『SOUNDTRACKS』に今日も心奪われている。


このアルバムがリリースされてから2ヶ月以上経過しているが、今でも毎日聴いている。
素晴らしい作品だ。


ここ数作、特に2015年発表『REFLECTION』、2018年発表『重力と呼吸』では、
小林武史のプロデュースを離れセルフ・プロデュースとなり、
これまでよりも更にロック・バンドとしてのアイデンティティの確立を目指していたように私にはうつった。

その流れから一転、今作では、歌をこれまで以上に深く届けたいという方向性から、
バンドサウンドを重視した作品ではなくなった。

ただ、今作では歌を際立たせる為に歌の後ろにバンドが隠れて、ひっこむわけではなく、
むしろこれまで以上に一つ一つの音が強調され、ストリングスやドラムやギターの音色や深みが
体の奥深くまでズンと響く仕上がりになった。

あくまで、ロック的なアプローチではないというだけで、最高の「音」のアルバムとなった。

そう、とにかく音がいい。ストリングス筆頭にとにかく、アレンジが凄い。


今作は、シール、U2、スティング、サム・スミスを手掛けたグラミー受賞エンジニアのスティーヴ・フィッツモーリスと共に制作を開始し、
ロンドンとロサンゼルスにてレコーディングされた。
世界を圧倒する音の作り手に身を委ねた結果、音楽的に大成功をおさめた作品になったと思う。

とにかく聴こえ方、伝わり方が明らかに違う。
この、深く染み渡るような感動は、彼らがその基盤をつくりあげたといっても過言ではない、
現在のJ-POPを、本作では一気に更新するような仕上がりになっている。
それでいて、少しも大仰な所はなく、毎日でも聴きたい作品。

ほぼすべての曲において、イントロの音や、曲の途中で弦の音がフェイド・インするだけで、
身震いし、今抱えているあらゆる心配事を瞬時に吹き飛ばしていく。

ただ、本作で歌われている内容は、コロナ以降の事ではない。

正直、聴く前は、歌詞の内容含め、コロナ禍で出口の見えない状況から救ってほしいと思っていた所もあった。
だが、本作ではこれまでどおりの変わらぬ日常が歌われている。
ただそうした結果本作では、それが最も素晴らしい要因となっている。


アルバムの収録曲『Documentary film』では、こう歌われている。


《今日は何も無かった
特別なことは何も
いつもと同じ道を通って
同じドアを開けて

昨日は少し笑った
その後で寂しくなった
君の笑顔にあと幾つ逢えるだろう
そんなこと ふと思って》


感染症のパンデミックという、地震や台風や事故のように目には見えない事象だからこそ、
見た目には今まで通りの普通の状態だからこそ、
これまで当たり前に存在した日常に対し、改めて意識的にならざるをえない日々が続いている。

特別なことは何もない、いつもと同じ日―今、残念ながら、そんな風に思える日は1日としてない。
そしてこの曲ではその後に、君の笑顔にあと幾つ逢えるだろうと歌われる。

普通の状況ではない毎日に普通を歌われる事で、正直良くも悪くも参ってしまった。

我々が今まで当たり前に送ってきた普通の暮らしを謳歌できない状態だからこそ、
より、その普通が輝く。より、その普通を求めてしまうからだ。

そして、この曲を聴いて、これまでの彼らの命題ともいえる自分探しの旅が、ようやく終わったのだと思った。
それは、もう彼らが青年期を完全に終えたという事なのかもしれない。

ただ、だからといって、このアルバムでは、
瑞々しさ、新鮮さ、ワクワクするフィーリングは失われていない。
収録曲『Brand new planet』では、こう歌われている。


《この手で飼い殺した
憧れを解放したい
消えかけの可能星を見つけに行こう
何処かでまた迷うだろう
でも今なら遅くはない
新しい「欲しい」まで もうすぐ》


ーそう、新しい「欲しい」まで、もうすぐ。

極端な話、ミュージシャンの仕事は、
ファンや聴き手の、新しい「欲しい」を曲の中で叶えてくれるだけでいい。

そんな、至極シンプルな要求にMr.Childrenは今でも軽く応えている。
その点も、本当に素晴らしいことだと思う。

このアルバムでは、自らの老いと若さの出し方のバランスもきちんととられているがゆえ、
あらゆる年代の聴き手の心をまだまだ離さないだろう。


―緊急事態宣言延長、ワクチン問題、変異株…新型コロナウイルス禍は今年もまだまだ続いていく。
形あるものは永遠ではないという事を、これまで以上に強く感じる1年に今年もなるのだろう。

前述の『Documentary film』では、こうも歌われている。


《希望や夢を歌った
BGMなんてなくても
幸せが微かに聞こえてくるから
そっと耳をすましてみる

ある時は悲しみが
多くのものを奪い去っても
次のシーンを笑って迎えるための
演出だって思えばいい》


例え、今の状況が悲しみが多くのものを奪い去るターンであっても、
次を笑うために今足元にある幸せは守りたい。
そんな事をこのコロナ禍において、この曲や本作を聴きながら強く思った。


昨年末この作品と出会えた事は私にとって、決して小さくない希望だった。
私含め、彼らのファンは今、幸福な状態にある。
バンドの状態としても間違いなくキャリア最高の状態である。

そう断言してもいいほどの作品と巡り会えた。

もう何度目かわからないが、Mr.Childrenがいてくれて本当に良かった。
新作『SOUNDTRACKS』、キャリア最高傑作。
どうか多くの人に届いてほしい。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい