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BiSHからもらった新しいエンジン

おっさんがBiSHにはまった理由

 BiSHにはまった。どっぷり、はまった。こんなにはまるとは思わなかった。アイドルグループに夢中になったことの無い自分が、おっさんになって、彼女たちの姿を、思いを、そして音楽を、こんなふうに追いかけることになるとは、全く予想外だった。そして今、BiSHの音楽は、宝物のような存在となっている。このおっさんのいつまでたってもモヤモヤしたまんまの思いに火を着け、胸の中のエンジンをパワーアップしてくれた。今まさに、轟音を上げて、走り出している。

 まだ自分は何者にもなれると信じていた頃も、そうではないことに気づいて先が見えなくてもがいていた頃も、思い描いた何者かにはなれずとも可能性にはいろんな種類があるんだということに気づいた頃も、自分はその時々の答えを、ロック・ミュージックに求め、そして受け取ってきた。考えてみれば四十年近くもロックを聴いてきて、そうやって受け取ったもののおかげで、楽になれた。それが今まで聴き続けてきた理由。
 だから、これからも、おっさんからじいさんになっても、ロックをずっと聴き続けていきたい。もっといろんなことがわかるようになれて、もっともっと楽になれて、そして、カッコいいおっさんに、カッコいいじいさんに近づきたい。結局、そんな、昔ロックを聴き始めた頃と同じようなことを、思い続けるんだろう。たぶん。
 確かに、あの頃から考えたら、得られたものも多いし、そのおかげで頑張れて手にしたものもある。でも。自分がイメージしていた、カッコいいおっさんに近づいているか、と考えると、どうしてもそうは思えない。自分に対する、I can’t get no satisfactionは相変わらず続いている。

 何なんだろう。これって、自分だけなんだろうか。他の人はどうなんだろう。こんな面倒くさいことを考えているのは自分だけなんだろうか。といって、人に聞いてみる勇気もない。結局、昔から何も成長していないんじゃないだろうか?そんな漠然としたモヤモヤが、常にずっと、ある。
 音楽は楽しむもの。それ以上でも以下でもない。だから自分がどうなれるかは自分次第。努力とチャンスを手に入れる力。客観的に見れば、確かにそうだとは思う。けど、これからもこうやって、死ぬまでずっとロックを聴き続けていくことで、ロックを聴いてきたからこその自分になれるんじゃないか、という思い込みのようなものがある。そうじゃなくては、聴いている意味が無い、とさえ思う自分が、かなり強力に居座っている。じゃあ、なりたい自分って、カッコいいおっさんって、何なんだろう?
 恥ずかしいけど、ぶっちゃけて言うと、ずっとロックを聴いてれば、あのキース・リチャーズみたいな、カッコいいじいさんになれるんじゃないか、と思っている。それも、毎日必ず太陽が昇って朝が来る、のと同じくらい無条件に。キースのように、余裕があって、ユーモアがあって、でもいつまでも若くて、何よりパワーがあって、ニカって笑えるじいさん。それが一番正直な答えかもしれない。やっぱり、成長してないな。今これを書きながら、笑ってしまった。

 そんな中二病みたいなおっさんがBiSHに出会ったのは、徐々にTVでも取り上げられるようになってきた頃。YouTubeで観た、大阪城ホールのライブ「オーケストラ」。何度この動画を見ても、全く同じ気持ちが身体中に沸き起こる。6人のうた、ダンス、そしてパワフルなバンドサウンド、そして観客を含めた会場の空気感の濃密さ。そう、チームBiSHは、確かにロックバンドのグルーヴを生んでいる。
 大切なものを失っても、それでも前に進んでいくしかない、この曲の持つ切なさ。それを表現する6人のうたとダンスが、化学反応を起こし、その波動が会場全体に広がって生まれた世界。バラバラだったものを一気に吸い寄せて一つにする世界。胸の奥の一番深いところにあるものが、そうした世界に激しく反応して、身体中を駆け巡って爆発する。そんな感覚を生み出す、唯一無二のグルーヴに、一発でやられてしまった。
 それからBiSHの音楽を聴きまくり、彼女たちの姿を追いまくった。ロックをモチーフにしたアイドルグループは他にもあるけど、BiSHは6人の、バラバラなキャラクターの内面が徐々に音楽的に解放されていく、その過程に夢中になり、はまっていった。

 決して最初から特別な存在だったわけではないメンバーたち。BiSHとしてのさまざまなチャレンジやメンバーチェンジを乗り越えていく過程で、自分自身を開放していくしかないことに気づいていく。それがBiSHとして表現されたとき、生々しさが急速に広がっていく。もちろん、楽曲の素晴らしさや、一人一人が歌い繋いでいくスタイル、楽曲を支える強力なバックバンド、そうしたものを一貫してプロデュースしていく、チームBiSHとしての一体感があるからこその魅力がもちろんある。
 しかし、ステージに6人が並んで、BiSHでしかあり得ないアイナの振り付けを、メンバーが描き出し、うたが鳴り出すとき、6人が作る、BiSHという一つの生き物の内面が見えてくる。骨があって筋肉があって、血が流れて心臓が脈打って、まさに生々しいとしか言いようのない感覚。それが、他には真似のできない、BiSHだけのグルーヴを生んでいる。それは、ロックバンドが、そのバンドでしか鳴らせないリズムで、メロディーで、奇跡のようなグルーヴを生み出すときのような瞬間のような。それも、まだまだ発展途上の。これから先、BiSHはもっと激しい化学反応で新しいグルーヴを生んでくれるんじゃないかと、予感させてくれる。

 コロナ禍に突入して以降、制約が多い活動環境の中でも、BiSHはさまざまな方法で、音楽を届けてくれている。最新アルバム「LETTERS」も、この厳しい環境をぶち破る思いの、全てが名曲と言ってもいい完成度だ。ラストのI’m waiting for my dawnは、チッチの思いがいっぱいに詰まった歌詞が、何倍にも膨らんで、ストレートに響いてくる。きっとライブでは、今まで以上のグルーヴを感じさせてくれるんじゃないかと思う。
 一つ一つは凸凹の交わらない思いが、音楽によってパズルのピースのようにぴったりはまって、6人が一つの爆発的なエネルギーを発する瞬間。その時、自分の中のエンジンが、激しく音を立てて動き出していくのを強く感じる。

 結局のところ、音楽は音楽であって、自分自身は自分自身で作っていくしかない。それは永遠に変わらない。でもその過程において、推進力となるエンジンを、より強力にしていくために、そしていつまでも転がっていくために、ロック・ミュージックが必要だ。
 あえて並べて書いてしまおう。早くコロナ禍が終わって、ローリング・ストーンズが来日してくれて、もう一度あのライブを観たいと強く思っている自分と、早くBiSHのライブに行って、あのグルーヴを体感したいと思っている自分は、一つだ。それぞれの音楽が生み出すそれぞれのグルーヴは、刺激的で、絶対に必要なものだ。BiSHという新たな、パワフルなエンジンを手に入れて、これからどこまで行けるんだろう。「beautifulさ」のライブ動画を観ながら考えていると、めちゃくちゃ楽しくなってくる。
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