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米津玄師がメディアから溢れ出す日々

「Pale Blue」がリリースされるので金曜17時には全集中力をスマホに注ぐ

それは︎《金曜17時砲︎》で幕があがる。

美しい日本語を織り成す米津玄師がまたしても想像の遥か上をゆく音楽を世に解き放った。
2021年6月16日にシングル11枚目となるCD「Pale Blue」がリリースされた。普段はメディアへの出演が極端に少ない米津だがプロモーションとしてテレビ、ラジオ、雑誌、SNS等から溢れ出すスペシャルな日々。米津の名前の一文字『米』を借りるなら米配給供給過多大豊穣祭のはじまりである。

音楽の新着情報をプレス各社がSNS発信し、所属事務所リイシューレコーズがTwitterでRT情報解禁する日時は金曜日17時が多く、そしてプロモーションの一定期間、毎週金曜日同時刻に続くのだ。
4月16日に金曜17時砲の第一弾は新曲「Pale Blue」がドラマの主題歌として劇中で公開されるという内容で始まった。

「ゆめうつつ」
表題曲「Pale Blue」よりも先にテレビから流れはじめたのがシングル2曲目となり、2021年1月よりニュース番組news zeroのテーマ曲として書き下ろされた。実は主題歌として起用が発表になったものの、初回放送日の9日前に「まだ作ってます。やばすぎる」と米津本人がツイートしていた。なんと可愛いのだろうとクスッと笑ってしまったが同時に初回放送に間に合うのだろうかと心配しながら当日のニュースをみていたのは貴重な思い出である。
毎日少しずつ違うパートが流れ、まるで薄いベールを剥がすかのように曲の片鱗が解禁されていく。生放送の報道番組のため大きなニュースが飛び込めば尺はほんの数秒だったり全く流れないそんな日もあった。
一日の出来事を「ゆめうつつ」で要約され最後には【また明日】と言ってくれる。楽しい事ばかりではないし悲しい出来事や怒りに満ちていた日だとしても迎える明日を応援してくれてるのだとしたらこんなに嬉しい事はない。曲がフル解禁されるのをいつかいつかと待ちわびていた。
待ちに待った配信日、曲の始まりと終わり方にまず驚く。
シンセ導入からのイントロの一部はノイズ?と一瞬耳を疑う。そして最後はプツッと途切れる様に終わる。まるで付いてるテレビ電源を無造作に消すみたいな、ヘッドホンのプラグを抜いて強制的に終わるような印象だ。米津曲の恒例ともいえる漢検1級レベルの単語【瀟洒】など語彙力の高さを証明しているし【アドバルーン】という歌詞で懐かしさを感じさせる言葉選びもスマートで何より歌声が心地良すぎて聴くのを止められない。そして譜割りがエグい。浮遊感のある優しい印象だが実は怒りを表現したと後に公開するラジオで語っている。怒りさえ美しくしてしまう表現力には、ただただ脱帽である。

「Pale Blue」
なかなか「ゆめうつつ」の全貌が明らかにならないまま4月から放送開始となったドラマ『リコカツ』では表題曲となる「Pale Blue」4分56秒のうち初回から約3分30秒間が流れフル解禁はドラマ6回目であった。このスピーディさに大賑わいとなり歓喜で湧く。一躍脚光を浴びる「Pale Blue」だが「ゆめうつつ」が少し心配になった。勝手なイメージだが中学生の部活、バスケ部に例えるなら新年からチームのために少しずつコツコツ努力をしてきた《ゆめうつつ部長》は、4月に彗星のように入部してきたスーパールーキー《Pale Blue新入部員》が試合でいきなりスタメンとなり3ポイントシュートを立て続けに決め、ダンクもこなしブザービートまでも軽々とやってのける新入部員に戸惑う、という印象であった。

さらに公開された「Pale Blue」MVは30歳となった米津の魅力がてんこ盛りだった。花束をブンブンと振り回したり、匍匐前進したりするが、何といっても、思い描いたものとは違う恋の結末に苦悩する女心を切なく麗しく歌い上げる姿に心を撃ち抜かれた。
一つ気になったのがMVの縦横比である。横に余白があるが、これは「大和比」といい「1:√2」という比率で、日本人が親しみやすいA4版やB5版など紙の寸法にも用いられているらしい。だがそんな知識のなかった最初の印象は額縁に飾られた絵画のような美しいMVだなという稚拙な感想だったのがちょっと情けない。
今までの曲制作で一番苦労したというこの曲はドラマ初回放送に間に合わず飛ばすかもと思った、と後に出演したラジオで語っている。11枚目のシングルは3曲中2曲が大変な苦労をしての制作だった事を踏まえると有り難み倍増である。そして配信日には「みんな〜、新曲だよ〜」と引用リツイートしてくれる米津がたまらなく愛おしい。

「死神」
配信日直前までほとんど情報のなかったシングルの3曲目はファンからすると、まさに真打ち《幻師》師匠の登場である。MVが配信前日の6月24日22時13分に公開となった。
公開された映像は個人的にずっと見たかった和装での登場。長身痩身で着こなすその姿はなんと美しいのだろうか。いや、美しいのは容姿だけではない。上手から登場し高座に上がり扇子を膝の前に置き深々とお辞儀、そして歌いながら羽織を脱ぎ呪文を唱え手を叩くという流れるような所作に目も心も奪われる。落語では、ここから話の本題だという時に羽織を脱ぐそうだが、羽織や裾のあしらい方が美しいと演芸界からお褒めいただく声が多く集まり、まるで自分が褒められたみたいに本当に嬉しい。そして曲中、落語好きという米津は右頬に手をそえる。これは立川談志さんに思いを馳せての演出なのかもしれない。
そして米津ファンが急に落語へ興味を持ち始め寄席へ行ってみたい、彼が死神役で座った客席に座りたいと思う気持ちに対して、落語への間口が広がって嬉しいと言ってくださる噺家さんのSNSを読み懐の深さに心からの感謝を申し上げたい。

「Pale Blue」MV公開の情報についても遊び心が満載だった。一見何も書いていない画像だが色彩設定を変更すると文字が浮かび上がるという公開予告ギミックが仕掛けられていたり、法人特典となるフレグランスに同梱されたPale Blue LETTERも何も書いていない様に見えるが水に浮かべるとメッセージが浮かび上がるのである。
そして#PaleBlueLetter カメラを公式が紹介。カメラを空に翳すと米津の筆跡でメッセージが届く。空を見上げる意図はまだまだ続く混乱の世の中を生き抜く人達へ、下ではなく上を向こうというエールなのかもしれない。
他にも東京スカイツリーとのコラボで3日間限定の特別ライティングや地上350メートル展望デッキでのMV上映会、TikTok公式アカウント開設など魅力的なプロモーションでシングルリリースは彩られた。

2020年8月にリリースされた5枚目のアルバム「STRAY SHEEP」は2021年5月14日時点で2020年の年間ランキング50冠だ。米津はヒットチャートについて《一定の距離で付き合っていくべき隣人》と表現しているが「Pale Blue」は6/29日付けオリコンで史上初TOP3を独占するという快挙を早速成し遂げている。記録を更新するだけでなく前人未踏の記録も数々作り上げる音楽家は今年30歳となった。才能に磨きと深みが増すというまさに虎に翼である。今後どんな栄誉を戴冠するのか楽しみが尽きない。

この夏のプロモーションによる情報は一旦終わりを迎え、米配給は終了したがそれでも金曜日の17時前になると何かツイートされるのでは?とソワソワ期待する毎週末をむかえている。次の情報解禁までは今年度分として供給された備蓄米を少しずつ食べ反芻し次の豊穣祭を楽しみに待ちたい。なにより、米津玄師という音楽家と同じ時代に生まれ日本語を母国語として生きる事を誇りに思う。

人の記憶は時が経つと曖昧になり風化され思い出せなくなる事がある。後に思い出せるよう、忘れないよう残しておくために音楽文のお力を借りて備忘録としたい。
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